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物理療法が東洋医学の中心的役割を担い、多くの実績を挙げながらも、なお医療全体の中では「民間療法」の低い地位に甘んじていなければなりませんでした。それが、今日の薬学や外科的療法中心の西洋医学体系の中で、着々と高い地歩を築きつつあるのは以下のような経緯によるものです。
(1)西洋医学理論と東洋医学との交わり
西洋医学はウイルヒョウらの細胞学説により近代医学としての歩みをはじめましたがそれらは、生体を物理的、化学的にとらえ人間を物質としてのみ考えたものでした。ところが20世紀になってホルモンや神経作穎が解明されるようになると、人間は単なる物質ではなく、複雑な生命要素がかかわり合った有機体的存在であるとの理論が有力となり、ホワイト・ヘッドらによって強調されるようになりました。
ホワイト・ヘッドはこの過程で内臓と体表との閑係を発表しましたが、それによると特定の内臓疾患があると、その内臓に関連のある体表部位に過敏帯を生ずるというもので、これが機嫁となり、逆に体表に刺激を加えて内臓の機能を高め、全身の機能を促進する東洋古来の物理療法が見直されることになりました。
1)内臓体表反射 内臓・皮膚・筋肉などからは求心性の神経が、脳や脊髄に向かって出ています。これらの器官に異常があると、求心性のインパルスが脊髄に入り、その部位と同じ高さにある皮膚知覚神経が過敏になり、その結果痛みやしびれが起こります。
内臓の異常が体表面に近い筋肉に、点や固まり、あるいはすじ状の緊張状態となって出るのが、肩こり、背中のこり、腕や脚のしこりです。また、内臓の変化が汗線や皮脂線、立毛筋に刺激を与えると、汗の異常分泌や鳥肌、かさかさの皮膚、脂っぽい皮膚、皮膚の冷え、ほてりなどとなって現れるのです。
2)体表内臓反射 前項の内臓体表反射による体表面の異常個所が分かれば、この体表部を刺激することによって、内臓諸器官や体の各部に影響を与えることができます。ツポをはり(針)やきゆう く灸)、指圧、マッサージ、電気などで刺激することで筋肉を弛緩させ、血行を促し、ホルモンの分泌を高め、痛みの鎮静、肺棒(ひ)筋の興奮を促すことができるのです。 1/3
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